2022年6月28日
抵触日とは?人材派遣会社が対応すべきことやリスク知ろう
人材派遣業界において「抵触日」の管理は重要です。この抵触日が適切に管理できていないと、違法派遣につながってしまうことも考えられます。
「抵触日について詳しく理解できていない」
「抵触日前にするべき対応は?」
「抵触日の管理が難しいと感じている」
今回はこういった疑問・お悩みにお答えします。人材派遣会社や派遣先が対応すべきこと、抵触日を過ぎてしまった場合のリスクなどを解説。
最後に抵触日や契約管理ができる、おすすめの管理ソフトも紹介していますので、ぜひ最後までお付き合いください。
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抵触日とは?
抵触日とは、労働者派遣法で定められている労働期間の制限を過ぎた翌日のこと。「抵触」には「法律や規則に触れる」という意味があることから、期間制限を過ぎてしまった翌日のことを抵触日と呼ぶのです。
2015年の派遣法改正により、派遣労働者が働ける期間は3年が限度となりました。これを「3年ルール」と呼ぶこともあります。派遣労働者は、原則3年以上同じ事業所や部署で働くことができなくなりました。
この法改正には、派遣労働者の雇用安定やキャリアアップが背景にあります。派遣は一時的な働き方であり、正社員と比べると雇用状況が不安定です。
派遣労働者の雇用安定の観点から、3年働いた派遣労働者については、派遣先企業が正社員として雇入れする努力義務などが課せられました。抵触日を設けることで、正社員になったり、別の部署にキャリアアップできたりする機会を増やそうという意図があります。
この抵触日は、次の事業所単位と個人単位という概念にわけられます。
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事業所単位
事業所単位の抵触日は「同じ派遣先の事業所」で働ける期間が原則3年までと定められています。
以下に該当する場合は、事業所単位の抵触日が適応になります。
- 工場・事務所・店舗・支店など場所的に独立している
- 経営単位として人事・経理・指導監督・働き方などがある程度独立している
- 施設として一定期間継続するもの
事業所単位は、同じ事業所で3年以上働くことはできませんが、延長申請をすることで継続して働けます。この延長申請については後述します。
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個人単位
個人単位は事業所や企業単位と異なり、組織単位の課やグループ単位で抵触日が定められています。
以下に該当する場合は、個人単位の抵触日が適応になります。
- 業務としての類似性や関連性がある
- 組織の長が業務配分・労務管理上の指揮監督権限を有している
個人単位は、派遣先の事業所において同じ組織(課やグループなど)で3年以上働くことができません。ただし、課を移動すれば継続して働けます。
事業所単位か個人単位であるかは、実態に即して個別に判断されます。
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契約を延長するために抵触日前に対応すべきこと
派遣労働者は原則3年以上働くことができませんが、派遣可能期間を延長することで継続ができます。ただし、個人単位の場合は延長が不可となっています。個人単位は、別の課(またはグループ)に移動することで継続が可能です。
ここでは、事業所単位の抵触日前に、延長するために対応すべきことを紹介します。
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意見の聴取
同じ派遣労働者に再び派遣社員として働いてもらいたい場合は、派遣の労働期間を延長します。まずは抵触日の1ヶ月前までに過半数労働組合に、意見聴取することが必須です。
過半数労働組合とは、労働者が過半数で組織する組合のことです。過半数労働組合がない場合は、事業所の労働者の過半数を代表する者が代わりを務めます。
意見聴取の手続きには、書面による通知を行って派遣延長に関する是非を問います。万が一異議が示された場合は、対応方針などを説明しなければなりません。
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延長手続き
意見聴取で、特に異議が示されなければ、以下の項目を書面に記載して社員にも周知します。
● 過半数労働者の名称(または過半数代表者の名前)
● 書面の通知日及び通知事項
● 是非を伺った日付と聴取内容
● 変更した期間(延長する期間を変更した場合)
これら上記の内容を書面にまとめて以後3年間保存する必要があります。延長できるのは3年間まで。3年後に再度延長する場合は、同じ手続きが必須です。
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人材派遣会社へ抵触日の通知
意見聴取の結果と変更になった抵触日を、派遣元会社に書面で通知します。この書面を受けて、派遣会社は派遣先企業と派遣契約を締結(延長)することになります。
こういった手続きを経て、同じ派遣労働者に継続して働いてもらうことができます。
聴取や書類作成に時間を要するため、余裕を持って対応することが大切です。
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抵触日を迎えてからの派遣労働者の雇用
同じ人を派遣労働者として継続して雇用したい場合は、抵触日前に行う延長手続き以外にも雇用の仕方や対応があります。
抵触日を迎えてからの派遣労働者への対応は、基本的に次の4つがあります。
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直接雇用する
本人が継続を望んでいる場合は、正社員として雇用することも可能です。もともと派遣先企業には、派遣契約終了後に直接雇入れする努力義務があります。両者が同意していれば、派遣契約を延長するより直接雇用した方がよいでしょう。その際は「直接契約の申込み」をする必要があります。
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別の課へ移動する
これは個人単位の抵触日の場合に限りますが、別の課やグループに移動してもらうことで、再度3年間働いてもらうことが可能です。
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契約期間を満了してもらう
派遣労働者本人に継続の意向がない場合は、そのまま契約期間を満了してもらうのも1つの方法です。
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別の企業(事業所)で雇用する
本人の希望があれば、別の企業で派遣社員として雇用してもらうこともあります。派遣先会社からのアフターフォローなどの対応は不要です。人材派遣会社は、本人の移行を確認する必要があります。
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派遣社員でも抵触日の制限がない場合
派遣労働者は、原則3年の期間制限があります。
しかし以下に当てはまる人は、例外的に制限の対象外となります。
● 人材派遣会社から無期雇用されている場合
● 60歳以上の派遣労働者
● 有期プロジェクト業務に従事する場合
● 勤務日数が通常より少ない派遣労働者(月10日以下)
● 産前産後休業・育児休業・介護休業などを取得する場合
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抵触日を過ぎてしまった場合のリスク
抵触日を過ぎてしまった場合は、原則派遣の契約期間の延長はできません。前述したように、同じ派遣社員に継続して働いてもらいたい場合は、直接契約の申込みをします。抵触日を過ぎたにも関わらず、派遣社員をそのまま働かせた場合は次のようなリスクが考えられます。
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人材派遣会社に対して業務改善命令
まず人材派遣会社には、労働局から業務改善命令が出される可能性があります。今後の業務改善に係る計画書や報告書を提出する場合があるようです。
この業務改善命令に反した場合、派遣停止命令や許可の取り消しなどもあり得ます。
こういった事態を招かないよう、派遣先だけでなく、派遣元会社も抵触日をしっかり管理する必要があります。
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労働契約申し込みみなし制度の適応
派遣先企業は、正しい手続きを踏まずに派遣社員を働かせていると、更生勧告措置が出される可能性があります。さらに、労働者派遣法で定められた「労働者契約申し込みみなし制度」が適用されることもあります。
労働者契約申し込みみなし制度とは、派遣元会社と派遣労働者で交わされた労働条件と同じ内容で、派遣先が労働契約を結んだとみなす制度です。違法派遣が行われた時点でこの制度が適用になり、派遣労働者が承諾した場合は、この労働契約が成立してしまいます。
しっかり3者間(派遣先・派遣元・派遣労働者)が納得したうえで、派遣契約を結ぶためにも、抵触日はしっかり把握しておく必要があるでしょう。
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派遣終了日・抵触日の事前アラート付きの人材派遣管理ソフトをご紹介
派遣先企業と人材派遣会社は抵触日をしっかり管理して、違法派遣にならないように対応する必要があります。
とはいえ、派遣スタッフや派遣先企業によって抵触日は異なり、これを1つ1つ管理・把握するのは至難の業です。膨大な派遣スタッフやクライアントを抱える人材派遣会社は、特に管理が難しくなるでしょう。
そこで活用したいのが「人材派遣管理ソフト」です。人材派遣ソフトは、スタッフ管理・クライアント管理はもちろん、抵触日の管理もできます。
特に人材派遣管理ソフト「メッキー派遣管理」は、派遣終了日や抵触日を事前にアラートで教えてくれる機能があります。抵触日通知書などもフォーマットがあり、検索した契約内容に対して簡単に出力が可能です。
こういった機能があれば、契約更新時のミスを防止できます。
派遣社員や契約内容の情報をエクセルで管理するには限界があります。ミスを回避するためにも、人材派遣管理ソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。