2024年9月21日

2025年問題とは?日本社会が直面する課題と解決策



2025年問題とは、日本において2025年に予想されるさまざまな社会的、経済的な課題のことを指します。主に急速な少子高齢化による労働力不足と、医療・介護サービスの逼迫が挙げられます。この2025年問題は、日本の未来に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、2025年問題が具体的にどのような影響を社会にもたらすのか、そしてその対策について詳しく解説していきます。少子高齢化が進む中で、私たち一人ひとりがどのようにこの問題に向き合い、解決に向けた行動を取るべきかを考えてみましょう。

2025年問題の背景について





少子高齢化が進む現代社会において、2025年問題は避けて通れない重要なテーマです。

では2025年の問題が起きる背景にはどのようなことがあるのでしょうか?

日本の少子高齢化の現状



日本の人口は近年、減少傾向にあり、2070年には総人口が9,000万人を下回り、高齢化率は39%に達すると予測されています。


また、団塊の世代が全員75歳を迎える2025年には、75歳以上の人口が全体の約18%を占め、2040年には65歳以上の人口が約35%に達すると見込みです。


諸外国と比べても日本の少子高齢化は進行しており、2025年問題に対応するには、現行の社会保障制度の見直しや医療・介護体制の改革、企業における多様な人材の確保などが求められます。

2025年問題に柔軟に対応し、持続可能な社会を築き上げていくことが重要になってきます。


引用:厚生労働省「我が国の人口について」より


2025年問題が社会に与える影響について



2025年、日本は大きな転機を迎えます。団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、国民の5人に1人が後期高齢者となる「2025年問題」が現実となる世界が目の前にきています。


この問題は、医療や介護の需要の急増、労働力不足、社会保障費の増大など、さまざまな社会的・経済的影響をもたらすと予測されています。2025年問題が私たちの生活にどのような影響を与えるのかについて触れていきます。

労働力不足



高齢者による労働市場からの引退や若年層の人口減少のために、労働力の確保が難しくなります。若年層の人口減については、長年にわたる出生率の低下が問題であり、労働市場に新たに入る人材が少なくなります。

特に介護や建設業など、特定の業界での人手不足が深刻化する可能性があります。

また、従業員1人あたりの業務負担が大きくなり、生産性やモチベーション低下に影響する可能性もあります。

このような急激な労働力不足により、経済成長の鈍化が懸念されています。

医療・介護の負担増加



高齢者の増加に伴い、医療費が増大し、財政に対する圧力がかかります。これにより、医療制度の持続可能性が問われることになります。

・高齢化が進む中で、医療・介護の現場では必要な人材が不足します。特に、介護職や看護職の離職率が高いため、サービス提供が困難になる可能性があります。

・人手不足により、従業員の負担が増加し、サービスの質が低下する恐れがあります。十分なケアが行き届かず、利用者の満足度が下がることが懸念されます。

・特に地方では人材が不足し、医療・介護サービスが提供されにくくなることがあります。これにより、地域医療の維持が難しくなる恐れがあります。

これらの問題に対応していくためには、在宅医療や訪問介護など、多様なサービス提供モデルが求められるようになると同時に、医療・介護職の人材育成が急務となります。新たなスキルや知識を持つ人材を育成することで、体制維持を図る必要があります。

事業承継が困難に

 

高齢化により多くの中小企業経営者が引退を迎える一方で、後継者不足が深刻化しています。これにより、事業承継が難しくなり、廃業や解散が増える可能性があります。

特に家族経営の企業では、次世代が事業を引き継ぐ意欲が低下していることが問題です。

廃業が増えることで地域経済や雇用に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、経営者が事業承継の計画を立てることなく、急な引退を迎えるケースが多く見られ、承継プロセスが混乱し、事業の継続性が脅かされるケースもあります。

そのため経営者が持つ専門的な知識や経験を次世代に伝承することが喫緊の課題となっています。

後継者がいない場合、M&Aや外部からの経営者の招聘も選択肢となります。これにより、事業の存続が図られることもありますが、文化の違いや経営方針の調整など別な課題も存在するため、密なコミュニケーションが必要となります。

2025年問題で生じる業界別問題



ここでは2025年問題で生じる問題について、主要な業界別に2025年問題がもたらす具体的な影響を探っていきます。

IT・情報サービス



IT人材の不足が深刻化しており、経済産業省の試算では、2025年以降もIT人材の不足が続き、2030年には最大で79万人が不足するとされています。

特にレガシーシステムの運用や保守を担う技術者が減少しています。多くの企業が使用している既存のITシステムが老朽化し、肥大化・複雑化・ブラックボックス化しています。これにより、システムの維持管理が困難になり、企業の競争力が低下するリスクがあります。

老朽化したシステムは新しいサイバー脅威に対応できず、セキュリティリスクが高まります。これにより、企業は重大なセキュリティインシデントに直面する可能性があります。

建設業界



現場で働く熟練労働者の引退が増え、若手の労働力が不足しています。

ベテラン技術者の引退に伴い、技術やノウハウの継承が難しくなっています。これにより、現場での作業効率や品質が低下するリスクがあります。

労働力不足により、賃金が上昇し、建設コストが増加します。また、熟練労働者の不足により、工期が延びる可能性もあります。

技術が正しく伝承されないことで、現場での安全性が低下するリスクがあります。特に、新人労働者の割合が増えることで、経験不足による事故のリスクが高まります。

建設業界は「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージが強く、若年層の就業希望者が少ない状況です。このイメージを払拭し、魅力的な職場環境をアピールしていくことも重要です。

介護・医療業界



2025年には介護職員は約30万人、看護職員は約13万人が不足すると言われています。この人材不足は、介護・医療サービスの質と量に直接的な影響を与えます。

また、高齢者人口の増加に伴い、医療費や介護費が急増し、社会保障費の負担が増大し、財政面で深刻な影響をもたらします。

高齢者同士が介護を行う「老老介護」や、認知症の高齢者同士が介護を行う「認認介護」が増加し、介護の質の低下リスクも懸念されます。昨今では若年層が家族の介護を担う「ヤングケアラー」の問題も深刻化しており、若者の就業機会を奪いかねません。

運送業界



ドライバーの高齢化に伴い、運送業界でも労働力人口が減少し、特にトラックドライバーの不足が深刻化しています。

2024年から施行される働き方改革関連法により、ドライバーの労働時間が制限されるため、さらに人手不足が顕著になります。

人手不足により、労働力の確保が難しくなり、人件費が上昇し、物流コスト増にもつながります。

物流業界では、効率的な運営のためのデジタル技術の導入が遅れており、IT技術の導入による業務効率化の促進や、人材確保のための労働環境改善などが求められます。

飲食業界



飲食業界でも労働力人口が減少し、特に調理スタッフやサービススタッフの不足が深刻化します。

物流業界の人手不足や燃料費の高騰により、食材の仕入れコストが上昇に影響を及ぼします。

特に生鮮食材の輸送が困難になり、品質維持が課題となります。

また、輸入食材の価格上昇が顕著で、メニューの価格設定に影響を及ぼし、必要に応じて再考を求められることになります。

中小規模での飲食店は、コスト的にもIT投資が難しい場合も多く、デジタル化による業務効率化も進みにくい点も大きな課題として挙げられます。

2025年問題に対し、企業が取り組むべきこと



2025年問題に対して、企業が取り組むべきことは業種によっても変わりますが、共通事項としては以下のような内容が挙げられます。

人材育成とスキルアップ



社内研修や教育プログラムの充実により、既存社員のスキルを向上させましょう。これにより、労働市場の変化に柔軟に対応できる人材を育成することができます。特に、介護や医療分野での専門知識を持つ人材の育成が重要となります。

離職率を下げる



労働人口が減少する中で、新たな人材を確保することが難しくなることが予想されています。離職率を下げることで、既存の人材を長期間に渡り保持し、企業の安定性を保つことができます。

また離職率を下げることで、採用や研修にかかるコストを削減できますので重要課題と言えます。

多様な雇用形態の導入



短時間労働やテレワーク、フリーランス、フレックスタイム制度など多様な雇用形態を導入することで、より多くの人々が働きやすい環境を提供できます。

少子高齢化により労働力が減少する中、幅広い人材を受け入れ、労働力を確保することは重要です。

育児・介護との両立: 育児や介護をしながら働く人々にとって、柔軟な働き方が提供されることで、離職率を低下させ、長期的な人材確保が可能になります。

健康経営の実践



従業員の健康管理やメンタルヘルス対策を強化することで、集中力やパフォーマンスが向上し、結果として離職率の低下や企業全体の生産性が向上します。


従業員の健康リスクを低減することで、企業が負担する医療費の削減も期待できます。健康経営に取り組むことで、社会的評価やブランドイメージが向上し、取引先や求職者からの信頼を得やすくなります。

外国人労働者の受け入れ



日本の生産年齢人口が減少しているため、外国人労働者を採用することで労働力不足を補うことができます。


外国人労働者は異なる文化や背景を持っているため、組織に新しい視点やアイデアをもたらし、企業のイノベーションを促進することが期待されます。


外国人の採用・育成の際は、文化や言語の違いを理解し、職場環境を整えることも重要です。

テクノロジーの活用(DX化推進)



AIや自動化技術を導入し、業務の効率化を図ることが重要です。特に、単純作業を自動化することで、人材をより価値の高い業務に集中させることができます。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しない場合、2025年以降に大きな経済損失が発生する可能性があると警告しています。これは「2025年の壁」と言われています。

多くの企業が古いITシステム(レガシーシステム)を使用しており、これがDX化の障害となっています。これらのシステムは複雑化し、システムを維持・運用するための専門知識を持つ人材も不足しており、メンテナンスや更新が困難になっています。

レガシーシステムの維持に多大なコストがかかり、新しい技術の導入が遅れることで、企業の競争力が低下し、年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性が指摘されています。

これらの取り組みを通じて、企業は2025年問題に対応し、持続可能な成長を目指すことが求められます。

まとめ



2025年問題は、もう目の前に迫った日本の社会全体に多大な影響を及ぼす深刻な課題です。高齢化が進む中で、介護・医療、運送、飲食業界など、さまざまな分野で人手不足やコスト増加、デジタル化の遅れといった問題が顕在化しています。


特に介護・医療分野では、高齢者人口の増加に伴い、サービスの需要が急増し、現場の負担が増大しています。同時に、運送業界ではドライバー不足が深刻化し、物流コストの上昇が避けられません。飲食業界でも、原材料費の高騰や人手不足が経営を圧迫しています。

これらの課題に対処するためには、IT技術の導入による業務効率化や、労働環境の改善が不可欠です。例えば、オンライン予約システムなどのIT技術を積極的に導入し、業務効率化を進めることで、少ない人材で業務を回す仕組みが重要になります。


また、持続可能な運営方法の確立も重要です。環境に配慮した取り組みや、地域社会との連携を強化することで、持続可能な未来を築くことが求められています。

政府や企業、地域社会が一丸となってこれらの課題に取り組むことで、より良い未来を実現することができます。今こそ、私たち一人ひとりが未来に向けて考え行動を起こす時です。始められる小さな一歩から行動を起こしていきましょう。