2023年4月5日

派遣法における3年ルールとは?令和3年派遣法改正の内容と派遣会社・派遣先の企業が対応すべきことを解説

派遣労働者のために定められている「派遣法」。中には「派遣法ってなに?」「派遣法の3年ルールってどんな法律?」など派遣法について詳しく知りたい方も多いと思います。

令和3年(2021年)にも2回にわたり改正が行われました。派遣会社は改正内容を把握し、現場のスタッフに周知、書類のアップデートをしなければなりません。しっかり対応ができていないと、労働局の監査で指摘や改善命令などを受けてしまうことも。

今回の記事では、派遣法の改正内容と派遣会社・派遣先企業が対応すべきポイントをまとめました。派遣法改正のアップデートはちゃんとできていますか?本記事でぜひチェックしてみてください。

そもそも派遣法とは?

まずここで「派遣法」についておさらいです。派遣法とは、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」のこと。つまり、派遣労働者の権利を守るために施行された法律です。派遣社員は正社員に比べると立場が弱く、不安定であることが現状です。

派遣法は1986年に施行されて以来、派遣社員の待遇や雇用の改善のため、何度も改正が行われてきました。派遣労働者にとっても、派遣法をしっかり守り、実行している派遣会社を選びたいはずです。直近の令和3年に施行された派遣法改正を、まずは確認しておきましょう。

派遣法における3年ルールとは?基本的な情報を分かりやすく解説

派遣法における3年ルールとは、派遣労働者を派遣先で働かせる期間に関する規定です。このルールにより、同一の派遣先で働く期間が原則3年を超えることはできません。

しかし、ルールには例外も存在し、一定の条件を満たす場合は期間を延長することも可能です。知っていると派遣社員への契約や営業方針が変わってくる可能性があるため、ここではそんな派遣法の3年ルールについて、基本的な情報を分かりやすく解説します。

なぜ派遣法の3年ルールが適用されたのか

派遣法の3年ルールが適用された理由には、派遣労働者の安定的な雇用を確保することが挙げられます。過去に派遣労働者が同じ派遣先で働く期間が長期化することにより、正社員と同じ労働条件を受けるべきにもかかわらず、安定的な雇用が保障されず、待遇面での不利益が生じることがありました。

そこで、3年ルールが導入されたことで、同一の派遣先での勤務期間を3年とし、その期間を超える場合は同一の派遣先で働けないように規定されました。これにより、派遣労働者の雇用安定化が図られ、待遇面での不利益が軽減されることが期待されました。

また、派遣労働者に対する社会保障の充実にもつながります。3年ルールにより、派遣労働者は同一の派遣先で3年以上勤務することができないため、次の派遣先で働く際にも再度の雇用契約が必要となります。そのため、派遣先や派遣元企業が社会保障の充実につながる正社員採用を促進することが期待されます。

派遣法の3年ルールはいつから適用されているのか

派遣法の3年ルールは、2015年9月30日から適用されています。このルールは、同一の派遣先で働く期間を原則として3年と定め、その期間を超えて同一の派遣先で働くことができないように規定されています。ただし、一定の例外があり、特定の業種や職種、就業形態については適用外となっています。

また、3年ルールは改正されることもあり、2018年には、同一の業務に従事することが条件となる「同一就業期間ルール」に変更されました。これにより、派遣労働者の待遇改善や雇用安定化が図られることが期待されています。

派遣法の3年ルールにおけるメリット

派遣法の3年ルールのメリットには、派遣労働者の安定的な雇用が促進される点が挙げられます。同一の派遣先で働く期間を3年と定めることで、派遣労働者が長期的な雇用を受けることができ、待遇改善や社会保障の充実にもつながります。

また、このルールは派遣先企業にもメリットがあります。例えば、3年ルールによって、同一の派遣労働者が長期的に派遣されることがなくなるため、派遣元企業が正社員の採用を促進することが期待されます。

これにより、派遣先企業はより専門的なスキルや経験を持つ正社員を採用することができ、業務の質の向上につながることが期待されます。

派遣法の3年ルールにおけるデメリット

派遣法の3年ルールのデメリットには同一の派遣先で働く期間が3年と定められているため、その期間を超えると同一の派遣先で働くことができなくなることが挙げられます。これによって、派遣労働者の雇用機会が制限され、就職の自由が制限される可能性があります。

また、派遣元企業にとっても、3年ルールはデメリットとなる場合があります。例えば、同一の派遣先で働く期間が3年と定められているため、派遣元企業が長期的な労働契約を結ぶことができず、派遣労働者を失うことになる可能性があります。

これによって、派遣元企業は人材不足に陥り、業務の継続が困難になることがあります。さらに、3年ルールによって、派遣労働者と正社員との待遇格差が広がることがあります。

同一の業務を担当する場合でも、派遣労働者は正社員よりも低い賃金や福利厚生を受けることが多いため、長期的に同一の派遣先で働くことができない場合、その待遇格差がより広がる可能性があります。

派遣法の3年ルールで雇い止めをする時の注意点

派遣法の3年ルールに基づいて派遣労働者を雇い止めする場合、注意点があります。契約期間中と満了時とで注意点は異なりますので、派遣元企業は、派遣労働者の同一の派遣先での勤務期間を正確に把握する必要があります。

ここでは、派遣法の3年ルールに基づく雇い止めに際して、それぞれのケースの注意点について解説します。

契約期間満了の場合

契約満了による派遣労働者の雇い止めを行う場合、派遣元企業は契約期間が満了する前に雇用期間を更新するか否かを検討する必要があります。

また、何度も契約更新をして、働いた期間が長期になる場合や、業務内容が正社員と変わらない場合などは、契約更新の拒否が認められない場合があります。派遣元企業は、法令に基づいて正当な理由を明確にし、手続きを正確に実施することが必要です。

参考:「雇止め法理」の法定化(第19条)

契約期間中の場合

契約期間中に派遣労働者を雇い止める場合は、正当な理由が必要とされます。派遣元企業は、同一の派遣先での勤務期間を正確に把握し、派遣労働者の雇用期間を更新するか否かを検討する必要があります。

また、契約期間中に雇い止めをする場合でも、人種、国籍、性別、年齢、障がいの有無などの差別的な理由での解雇は違法とされています。派遣元企業は、法令に基づいて正当な理由を明確にし、手続きを正確に実施することが必要です。

派遣法における3年ルール4つの抜け道

派遣法の3年ルールには、一定期間を超えた派遣労働者に対する同一労働同一賃金の原則や正規雇用に近い待遇を義務付ける重要な役割があります。

しかし、実際には、このルールには以下の4つの観点で例外や抜け道が存在しています。

  • ・部署を移動する
  • ・無期雇用の派遣社員へ切り替える
  • ・パート・アルバイト扱いに変更する
  • ・派遣先で正社員となる

ここでは、派遣法の3年ルールにおける4つの抜け道について解説します。

部署を移動する

派遣法において、同一の派遣先で3年以上働いた場合、原則として正社員と同等の待遇が義務付けられます。

しかし、部署を移動することでこのルールを回避することができます。例えば、同一企業内で部署を変えることで、実質的に新しい派遣先となり、3年ルールの対象外となることがあります。

ただし、この場合でも同一企業内での移動であっても、同一労働同一賃金の原則に基づいて、派遣元企業は、同一の企業であっても同等の待遇を提供することが求められます。

無期雇用の派遣社員へ切り替える

派遣元企業が派遣先企業に派遣社員を正社員として採用することで、派遣法の規制を回避することができます。

しかし、この方法には問題もあります。例えば、派遣社員が正社員に切り替わったとしても、同一労働同一賃金の原則に基づいて、派遣元企業が同等の待遇を提供することが求められます。

また、無期雇用となった場合でも、派遣先企業との契約が解除された場合は、再び派遣元企業に戻されることがあるため、雇用安定性が低下する可能性があります。

パート・アルバイト扱いに変更する

派遣元企業が派遣先企業に対して派遣社員をパートやアルバイトとして配置することで、派遣法の規制を回避することができます。

しかし、この方法にはいくつかの問題があります。例えば、パートやアルバイトとして扱われるため、派遣社員は正社員と比べて待遇が劣ることがあります。また、同一労働同一賃金の原則に基づいて、同じ仕事をしているのにもかかわらず、正社員と待遇が違うと判断されることもあります。

このように、派遣法の抜け道であるパートやアルバイト扱いへの変更については、派遣社員の雇用安定性と待遇の観点で注意が必要です。

派遣先で正社員となる

派遣先企業が派遣社員を正社員として採用することで、派遣法の規制を回避することができます。

ただし、この方法は派遣先企業の意向によるものであり、必ずしも派遣社員が正社員になれるわけではありません。また、正社員になるには、派遣先企業が雇用条件や採用基準に沿って選考を行う必要があります。

さらに、正社員になっても、派遣社員として働いていた期間の年数が計算される場合があるため、3年ルールを回避することができない場合もあります。このため、派遣先で正社員になる方法は、抜け道の中でも比較的難易度が高く、確実性が低い方法の一つと言えます。

派遣法における3年ルールのクーリング期間とは

派遣法における3年ルールでは、派遣社員が同じ派遣先で3年以上働くことが禁止されています。

しかし、クーリング期間というものがあり、1年間の間に別の派遣会社を経由して同じ派遣先で働くことができます。この期間をクーリング期間といい、1年経過した時点から再度同じ派遣先で働くことができるようになります。

ただし、クーリング期間中に同じ派遣先で働くことが禁止されている場合もあるため、注意が必要です。また、派遣先企業が同じ派遣社員を再度雇用する場合には、雇用条件が変更されることがあるため、再度働く前に契約内容をしっかり確認することが大切です。

令和3年の派遣法改正

令和3年(2021年)の改正は、1月と4月の2回に分け施行されました。2021年の改正項目は、大きな変化はありませんでしたが、派遣労働者の雇用にあたり限定的な対応や注意点があります。

2021年1月と2021年4月の改正項目をそれぞれみていきます。

令和3年1月1日施行の派遣法改正4つの項目

2021年1月に改正された項目は以下の4つでした。

  • ・派遣労働者の雇入れ時に説明する事項の追加
  • ・労働者派遣契約の電磁的記録による作成
  • ・日雇い派遣における労働者派遣契約の解除などの措置
  • ・派遣労働者からの苦情処理

改正された派遣法にしたがって、社内でアップデートができているか、今一度確認してみてください。

①派遣労働者の雇入れ時に説明する事項の追加

雇用される派遣労働者に対し、キャリアアップ措置について説明することが義務化されました。キャリアアップ措置とは、教育訓練やキャリアコンサルティングのこと。雇用期間に限りのある派遣労働者は、長いキャリア形成の構築が難しい立場にあります。

そこで、派遣元である派遣会社が教育訓練やキャリアコンサルティングの説明を実施し、派遣社員のキャリア形成支援を図る狙いです

②労働者派遣契約の電磁的記録による作成

これまで、派遣元と派遣先が交わす「労働者派遣契約」に関しては、必ず書面での契約が必要でした。

しかしこの改正により、電磁的記録、つまり電子データでの契約書の作成が認められたことになります。ペーパーレス化することにより、契約更新の作業もより効率的に対応できるでしょう。派遣業務の電子化を、国も推進していることがわかります。

③日雇い派遣における労働者派遣契約の解除などの措置

日雇い派遣労働者が、責任のない契約解除にみまわれた場合、派遣元の派遣会社に休業手当の支払い義務があると定めました。

また気を付けたいのが、休業手当を支払った損害として、派遣先企業も、派遣元の派遣会社に支払いの義務があるとされていることです。例えば「今日は人が足りているから」といった、安易な理由で契約を断ってしまうと、派遣元の派遣会社・派遣先企業ともに責任が問われるため注意が必要です。

④派遣労働者からの苦情処理

これまで派遣労働者からの、労働に係る苦情処理は所属元である派遣会社が主に対応してきました。

しかしこの改正により、派遣労働者の苦情処理は派遣先企業も、主体的に対応して処理すべきと明記され、対応が求められています。

令和3年4月1日施行の派遣法改正2つの項目

さらに4月からは、以下の2つの派遣改正項目が追加されました。

  • ・雇用安定措置に関する派遣労働者の希望の聴取(派遣法の3年ルール)
  • ・マージン率等のインターネットでの提供

①雇用安定措置に関する派遣労働者の希望の聴取(派遣法の3年ルール)

雇用安定措置」は2015年に施行された規定で、派遣期間が終了したあとに正社員化を促す措置のことです。これは派遣会社にも、派遣先の企業にも課せられている努力義務。

今回の改正で、あらかじめ派遣労働者から、希望する雇用安定措置の内容をヒアリングすることが義務化されました。またヒアリングした内容は、派遣元・派遣先管理台帳に記載が必要です。

※派遣元・派遣先管理台帳とは、派遣社員ごとに作成する就業実態を把握するための書類

②マージン率等のインターネットでの提供

マージン率の情報は、原則としてインターネットの利用による情報提供が必要になりました。

マージン率とは、「派遣料金の平均額」や「派遣労働者の賃金の平均額」のこと。こういった情報をホームページ上に開示することが必須です。

情報開示の義務がある項目は以下の通りです。

  • ・事業所ごとの派遣労働者数
  • ・派遣先数
  • ・マージン率
  • ・教育訓練
  • ・労使協定の締結の有無

派遣元企業(派遣会社)が対応すべきこと

2021年の派遣法改定では大きな変化はなく、限定的な対応が求められました。改正に伴って、派遣会社が求められる具体的な対応とは一体なんでしょうか。

教育訓練の説明

上で説明した通り、派遣労働者として雇用する際に、教育訓練やキャリアコンサルティングの説明が必須になりました。

また、雇用安定措置として正社員化を進めるにあたり、希望するキャリア形成のヒアリングを事前にしなければならなくなりました。派遣社員の雇入れの際に、こういった説明がちゃんとできているでしょうか。派遣労働者の雇用の安定、キャリア形成支援の対応が必要です。

業務のデジタル化

改正によって、労働者派遣契約がデジタル化されたことにより、派遣業務はよりデジタル化・ペーパーレス化が進むと考えられます。今までのように書面での契約でも問題ありませんが、これを機にソフトの導入やデジタル化を検討するのもいいでしょう。

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マージン率等、HPへの必要事項の提示

必要な情報開示が原則されたことにより、インターネットにて情報提供をしなくてはなりません。自社のホームページを確認し、必要な情報が正しく載っているか確認する必要があります。さらに詳しい内容は、派遣元事業主の講ずべき措置等にも記載されています。

派遣先企業(事業主)が対応すべきこと

派遣法改正にともなって、派遣先企業(事業主)が対応すべきこととして主に以下3点にまとめました。

  • 教育訓練の説明
  • 業務のデジタル化
  • マージン率等、HPへの必要事項の提示

詳細を解説していきます。

雇用安定措置(正社員化)とヒアリング

3年間の派遣雇用契約終了後は、今後の雇用を考え派遣先にて直接雇用や期間のない無期雇用などの措置を講じる必要があります。ただし、本人の意思や要望をヒアリングすることが前提です。ヒアリングした内容は必ず「派遣先管理台帳」にまとめましょう。

より主体的な苦情処理

派遣先の企業でも派遣労働者からの苦情は、より主体的に対応すべきと明記されました。そのため、苦情処理実施責任者の選定が必要になってきます。苦情の解決に向けて、派遣元と派遣先で連携して対応ができる体制をつくっておくことが必要です。

派遣先管理台帳の管理

今回の改正で、「派遣先管理台帳」の管理がより大切になってきました。雇用安定措置のためのヒアリング、苦情処理のヒアリング、そのほかの就業情報までしっかり記録しておく必要があります。

問題ありとみなされて監査が入った場合も、この「派遣先管理台帳」はかならずチェックされる書類です。適切に管理しておく必要があります。さらに詳しい内容は、派遣先の講ずべき措置等にも記載されています

まとめ

派遣法は今後も改正されていくため、そのたびに社内への周知、書類のアップデートが必要不可欠です。対応がしっかりできていないと、派遣労働者の不満につながり、スタッフからの苦情・離職の問題へと発展してしまいます。

派遣スタッフに教育訓練やキャリア形成の説明ができていますか?ホームページに必要な情報開示ができているでしょうか?契約書の電子化を検討し、担当者と協議してみましょう!国も契約書の電子化を認めるなど、デジタル化を推奨しています。

これを機に、法改正にも対応でき、ペーパーレス化も実現できる人材派遣業務管理ソフトの導入を考えてみるのもいいでしょう。メッキ―人材派遣は、人材派遣業務に特化した管理ソフトです。

派遣業を知り尽くしたエンジニアが設計しており、煩雑な派遣業務を網羅し、データを統一、集約します。さらに、派遣法改正に準じた書類や機能のアップデートに対応しており、安心してお使い頂けます。

法改正に伴う書類のアップデート、管理にお悩みの方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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