2023年10月16日

労使協定方式とは?派遣先均等・均衡方式との違いやメリット・デメリット



働き方改革を背景に「同一労働同一賃金」を実現すべく、2020年4月1日に改正労働者派遣法が施行されました。同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(派遣社員など)の間の不合理な待遇差を解消するために作られ導入されたものです。同じ労働(業務内容)であれば、同じ賃金を払うべきという考えからきています。

待遇差をなくす規定の整備で用いられる方式として、労使協定方式と派遣先均等・均衡方式があります。人材派遣会社ではこのどちらかを採用して待遇を決定しています。今回は、両者の違いやメリットの多い「労使協定方式」に焦点をあてて改めて解説いたします。


労使協定方式とは?



「労使協定方式」とは、待遇差を解消する規定整備で用いられる待遇決定方式のことです。派遣労働者を含む、過半数労働組合と派遣元(派遣会社)の間で労使協定を締結し、書面を交付して派遣社員の待遇を決定します。

労働組合がない場合は、労働者側で選出された代表者が代わりとなって、労使協定を結ぶことも可能です。

労使協定方式では、労働者と派遣元との間でおこなわれるため、派遣先の都合や賃金基準に影響されず待遇を決定できます。職務内容を公正に評価して賃金や待遇を決定し、必ず書面で締結します。

労使協定方式を採用していても、書面の締結ができていない場合は無効となるため注意が必要です。その場合、別の待遇決定方式である「派遣先均等・均衡方式」が適用されます。

労使協定方式と派遣先均等・均衡方式の違いとは?



「派遣先均等・均衡方式」は、派遣先と派遣元で待遇を決定します。職務内容が同様の比較対象労働者を派遣先で選定し、対象労働者の待遇情報を派遣元に提供。均等な待遇を確保しながら、職務内容・職務の成果、意欲・能力・経験などを勘案して賃金を決定します。

以下に「労使協定方式」と「派遣先均等・均衡方式」の違いの比較をまとめました。

労使協定方式派遣先均等・均衡方式
待遇決定の方法派遣労働者(労働組合)と派遣元の間で決定する派遣先と派遣元の間で決定する
賃金を決定する際の比較対象国が定める一般労働者の基本給・手当・総額時給派遣先会社の正規雇用労働者の賃金(比較労働者を選定する)
派遣先が提供する情報教育訓練や給食施設、休憩室、更衣室などの福利厚生施設職務内容・配置変更範囲・賃金・福利厚生・福利厚生施設など



派遣先均等・均衡方式では、派遣先の労働者の待遇と比較して、同等となるように賃金を決定します。労使協定方式では、国が定める一般労働者の賃金と比較して決定するところが大きな違いです。


派遣先均等・均衡方式では、派遣先の労働者の待遇と比較して、同等となるように賃金を決定します。労使協定方式では、国が定める一般労働者の賃金と比較して決定するところが大きな違いです。

「同一労働同一賃金」の観点からみると、派遣先均等・均衡方式が理にかなっているようにみえます。しかし派遣先の賃金基準に大きく左右され、派遣先が変わるたびに待遇が変わってしまうことがデメリットといえるでしょう。また派遣先も、職務内容の他、配置変更範囲・細かい福利厚生などの詳細情報を提供しなければならず手間がかかることもあり、多くの企業では労使協定方式を採用しているケースが多いといいます。

労使協定方式のメリット・デメリット



採用している企業が多い労使協定方式ですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。デメリットも交えて紹介します。

労使協定方式のメリット



労使協定方式は、派遣元と労働者間で労使協定を結ぶため、派遣先の賃金に影響されないメリットがあります。また派遣先が変わっても、一定して同じ待遇を受けられ、賃金が下がることはありません。

賃金が安定することで、派遣社員の定着率やキャリアップにもつながるでしょう。

さらに派遣先企業にもメリットがあります。派遣先均等・均衡方式だと、比較対象となる社員の詳細は待遇情報を提供する義務がありますが、労使協定方式の場合は、主に教育訓練や福利厚生施設の情報のみ。比較対象労働者の選定も不要になり、待遇決定の手続きにおいて、煩雑な事務作業が少なくて済みます。

労使協定方式のデメリット



一方デメリットは、派遣元会社側の手間が多い点です。労使協定方式では、派遣元と労働者間で協定に合意し書面で締結します。事前の確認や合意を得るまでのプロセスに時間がかかるため、負担が大きいといえます。

また賃金は、国が定める一般労働者の賃金と比較して決定するため、派遣先の正社員と派遣社員とで賃金が異なることになります。派遣社員の賃金が著しく低かった場合は、会社内で不満の声が上がる可能性があるでしょう。

労使協定方式による一般賃金の算出の仕方



労使協定方式で賃金を決定する際に用いる、基本的な算出方法があります。

この算出方法を用いて「基本給(賞与・手当含む)」「通勤手当」「退職金」を算出するのが一般的です。

基本給及び賞与、手当等



基本給(賞与・手当含む)は、「基準値×能力・経験調整指数 × 地域指数」で求められます。

基準値と能力・経験調整指数は、国が公表している「賃金構造基本統計調査」か「職業安定業務統計」を用いて決定します。業務に最も近いと考えられる職務を選択することが大切です。

なお、賃金構造基本統計調査と職業安定業務統計どちらを使うかは、のちに書面に明記する必要がありますので覚えておきましょう。

地域指数は、都道府県別に定められた指数、または管轄のハローワークの指数から決定します。派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地で判断します。

通勤手当



通勤手当には「実費支給」と「定額支給」があるため、どちらにするか決定します。実費支給は、職場までの交通費を文字通り実費で出勤日数だけ支給する方法です。

定額支給は、一般手労働者の通勤手当(時給換算で71円)を確保して交通費を支給します。

どちらを採用するかも、のちに明記する必要があります。

退職金



退職金は、次の3つの方法から選択して算出します。

  • 退職金制度による方法

一般退職金と比較して、同水準以上となっていることが必須

  • 退職金前払いによる方法

基本給の6%以上にあたる額を、毎月賃金に上乗せして支給

  • 中小企業退職金共済制度への加入による方法

「掛け金×勤続年数×年齢」で算出。毎月退職金を積み立てる制度

派遣元・派遣先に求められる対応



労使協定方式を採用した場合、派遣元・派遣先に求められる対応は異なります。

特に派遣元で求められる対応が多くなりますので、事前に確認しておきましょう。

派遣元



派遣元に求められる対応は主に次のとおりです。

①労使協定案の作成

②派遣先からの待遇情報の取得

③労使協定に基づく待遇の決定

④労使協定の締結

⑤雇入れ時・派遣時の明示・説明

労使協定案の作成では、厚生労働省が配布している雛形が役に立ちます。労使協定に定める事項(賃金決定方法、賃金以外の待遇決定方法など)を決定し、明記しなければなりません。また、派遣先からは教育訓練や福利厚生施設の待遇情報を取得します。

その後に労働組合と協議し、合意したのち協定を締結します。書面の交付などにより、派遣社員に周知し、作成した書面は3年間保存することが必要です。派遣労働者の待遇に関して、雇入れ時と派遣時に明示と説明をしましょう。

派遣先



派遣先に求められる対応は、主に次のとおりです。

①教育訓練と福利厚生施設に関する情報提供

②教育訓練と福祉厚生施設の提供

派遣先企業は、派遣元に教育訓練や食堂・休憩室・更衣室などの福利厚生施設の待遇情報を提供する義務があります。派遣社員も同等にこれらを利用できるように均等・均衡を確保しなければなりません。

また派遣社員に対しては、必要となる教育訓練の実施と、食堂・休憩室・更衣室などの利用を提供します。

まとめ



労使協定方式は合意や締結に至るまでの手間はあれど、派遣社員や派遣先にとってもメリットのある方法です。多くの人材派遣会社が採用しています。

なお、どちらの待遇方式にするかの決定は、派遣先企業ではできません。どちらを採用しているかは、各人材派遣会社のホームページ等で明記しているはずです。

派遣社員の待遇改善は、定着率やキャリアアップにつながる重要項目。法に則った対応ができているかどうか、派遣社員の待遇改善をこの機会に改めて確認してみてはいかがでしょうか。