2024年4月24日

令和6年から始まる定額減税の内容とメリット・デメリットを解説



この記事では定額減税の内容や実施の背景、実施方法などについて解説します。

より詳細な内容をお知りになりたい場合はこちらのサイトよりご確認ください。


定額減税の概要



令和6年度の税制改正により、令和6年分の所得税について定額による所得税の特別控除(定額減税)が実施されることとなりました。

定額減税は、所得税と住民税の減税を行う制度です。具体的には、給与等の源泉徴収義務者が所得税と住民税から一律に一定額を控除することで、納税者に経済的な支援を提供します。

減税の対象は令和6年分の所得税と住民税の納税者本人、同一生計の配偶者、および扶養親族となります。詳しくは後述しますので、ご確認ください。

定額減税が実施される理由とは?



物価の上昇が賃金の上昇を上回り、国民の生活負担が増大している状況が背景にあります。

国民の負担軽減を目的として、所得税と住民税の定額減税が実施されることになりました。

これは国民の負担緩和には可処分所得を直接的に下支えする所得税・個人住民税の減税がもっとも望ましいと考えられたためです。

物価上昇を上回る持続的な賃上げを促進し、経済の活性化を図ることを目指したものになります。

定額減税は、所得税を一定額減税する方法です。特に経済的に困難な時期に、国民の負担を軽減し、消費を刺激する目的で実施されることがあります。この政策は、所得の高低に関わらず、全ての納税者に同じ額の減税を提供することが特徴です。

定額減税の対象と納税額



定額減税の対象や減税額ついては以下の通りです。

定額減税の対象


  • ●令和6年分所得税の納税者である国内居住者

  日本国内に居住していない者は対象外となります。

  • 令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方

  (給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下である方)

定額減税の減税額


  • 本人(居住者に限ります) 

  所得税減税 30,000円

  住民税減税 10,000円  

       例えば妻と子供2人の4人の世帯の場合は計160,000円の減税となります。

  • 同一生計配偶者または扶養親族(いずれも居住者に限る) 1人につき30,000円


定額減税の実施方法



特別控除は、所得の種類によって、給与所得者、公的年金等の受給者、事業所得者等に対してそれぞれ異なる方法で実施されます。

給与所得者


▼月次減税

令和6年6月1日以降に支払われる給与や賞与に係る源泉徴収額から定額減税額が控除されます。

※扶養控除等申告書の未提出者は給与の支払い者の下では控除できませんので注意が必要です。


▼年調減税

年末調整では、その時点での定額減税額を基に、1年間の所得税額を調整します。

年末調整で特別控除の額を所得税額から控除した際、控除しきれない額が生じる場合があります。

控除しきれない額がある場合は、確定申告を行い、最終的な特別控除の額を計算し、納付すべき税額または還付される税額を精算します。

公的年金等の受給者



令和6年6月1日以降に支払われる公的年金から定額減税額が控除されます。異動が生じても、控除される減税額は変わりません。

令和6年に支払われる公的年金の源泉徴収額から減税が行われ、減税額に達するまで続きます。減税しきれなかった場合は、確定申告を通じて差額が調整されます。


事業所得者等



令和6年分の所得税の確定申告時に定額減税額が控除されます。

予定納税がある場合は、確定申告から控除します。

予定納税とは前年の所得税の申告額が15万円以上の場合に、翌年の所得税の一部を事前納付することです。

詳細な定額減税のやり方については以下の資料をご覧ください。

令和6年分所得税の定額減税のしかた



定額減税は派遣社員にも適用されますので、しっかり活用しましょう。


定額減税の影響とは?



定額減税は給付ではなく減税方式です。家計において、減税は実感しにくいため、日々の生活の中で適切な管理が難しいのではないかという懸念があります。そのような定額減税が個人、家庭、そして社会全体にどのような影響を及ぼすかについてまとめます。

▼個人への影響

所得税の負担が軽減され、手元の収入が増加します。これにより、消費支出(消費マインド)の刺激が期待されます。また、住民税の負担が軽減され、世帯の税負担が軽くなります。

▼家庭への影響


定額減税により、家計の手元の収入が増えることで、生活の安定に寄与します。また、定額減税は扶養家族も対象となるため、子育て世代の税負担軽減にもつながります。

家計の収入増加が消費支出につながり、経済全体に好影響を及ぼすことも期待されています。

▼社会全体への影響


家計の消費刺激や企業の生産活動の活性化により、景気回復につながることが期待されます。

景気の上向きに伴い、雇用の安定が期待されます。

次に具体的に世帯の減税について見ていきます。

会社員の夫(所得が1,805万以下)、専業主婦(同一生計配偶者)、小学生の子供が2人(扶養家族)の4人家族の場合を例として、どれぐらい税金が減るのかを見ていきましょう。

本人(会社員の夫)

(同一生計配偶者)

子供2人(扶養家族)

所得税:3万円


住民税:1万円


合計:4万円

所得税:3万円


住民税:1万円


合計:4万円

所得税:3万円


住民税:1万円


合計:4万円✕2人=8万円



したがって、この4人家族の定額減税(所得税と住民税の合計)の合計減税額は、16万円となります。

なお、年金生活者も定額減税の対象となります。一定以上の年金受給で生活している方は夫婦の場合、1人当たり4万円の計8万円が減税されることになります。

定額減税のメリットとデメリットとは?



定額減税のメリット・デメリットについて以下に整理します。

メリット



・所得に関係なく一定額を差し引くため、低所得者や中所得者層にとって有益

・経済の活性化に寄与し、消費意欲が高まり、企業の売上や雇用が増加・安定

・国や地方自治体の税収減少による財政への影響はあるものの、経済活性化による税収増が見込まれる

デメリット



・所得税非課税層は定額減税の恩恵を受けられない

・一時的な効果しかもたらさない可能性がある

・持続的な経済成長には他の政策が必要

・個人事業主は、給与所得者と異なり、毎月の源泉徴収がなく、原則として令和6年分の確定申告のタイミングで定額減税を実施されるため、減税の恩恵が遅くなる。

まとめ



以上、定額減税について解説してきました。減税はかなり広範囲に設定されており、幅広い方が恩恵を受けることができます。その一方で、効果が一時的なものにしかならない、などの懸念もありますが、その他の政策を絡めながら、効果をより持続的なものにしていくことも求められます。

定額減税は一人ひとりの給与計算などに影響を及ぼします。

従業員の多い企業などでは、労務担当者の業務がかなり煩雑になり、ミスも生じる可能性もあるため注意が必要です。